相続・名義変更
相続手続きの全体の流れ|最初に知っておきたい順序
目次
結論
相続の手続きは数が多く見えますが、「遺言書を確認する → 相続人を確定する → 財産を把握する → 遺産の分け方を決める → 名義変更・申告を行う」という大きな順序でとらえると、落ち着いて進められます。相続放棄(原則3ヶ月以内)や相続税の申告(原則10ヶ月以内)など期限のあるものは早めに頭に入れておき、判断に迷う部分は司法書士・税理士・弁護士などの専門家に相談しながら進めましょう。
大切な方を亡くされたあとの相続手続きは、なじみのない言葉や書類が多く、どこから手をつければよいか戸惑う方が少なくありません。けれども、全体を大きな流れとしてとらえてしまえば、一つずつ順を追って進められます。このページでは、相続手続きのはじまりから名義変更までの道すじを、期限の目安とともに静かに整理します。急いで結論を出す必要はありません。できる範囲で、少しずつ確認していきましょう。
相続手続きの全体像をつかむ
相続手続きは、細かく見ると数十の作業に分かれますが、大きくは次の順序で進みます。まずはこの流れ全体を頭に入れておくと、いま自分がどの段階にいるのかがわかり、落ち着いて取り組めます。
- 遺言書の有無を確認する:自筆の遺言書がある場合、家庭裁判所での検認が必要になることがあります。
- 相続人を確定する:戸籍をたどり、誰が相続人にあたるかを確認します。
- 相続財産を把握する:預貯金・不動産などプラスの財産と、借入などマイナスの財産を洗い出します。
- 相続方法を検討する:そのまま引き継ぐか、相続放棄や限定承認を選ぶかを考えます(期限あり)。
- 遺産分割協議を行う:相続人全員で遺産の分け方を話し合い、合意内容を書面にまとめます。
- 名義変更・申告を行う:不動産の相続登記、預貯金の解約・名義変更、必要に応じて相続税の申告を行います。
この流れは、故人の状況やご家庭の事情によって前後することがあります。すべてを一度に進める必要はなく、期限の近いものから順に確認していけば十分です。以下では、それぞれの段階をもう少しくわしく見ていきます。
遺言書の有無を確認する
相続手続きの出発点は、遺言書があるかどうかの確認です。遺言書があるかどうかで、その後の進め方が大きく変わります。故人の自宅の引き出しや金庫、貸金庫、あるいは信頼していた方や専門家のもとに保管されていないかを、落ち着いて探してみましょう。
自筆で書かれた遺言書(自筆証書遺言)が見つかった場合は、その場で開封せず、家庭裁判所で「検認」という手続きを行うのが原則とされています。公証役場で作成された公正証書遺言や、法務局の保管制度を利用していた自筆証書遺言では、検認が不要とされる場合があります。遺言書が見つかったときの扱いについては、遺言書が見つかったら(検認)の解説もあわせてご確認ください。
遺言書の有無や種類によって手続きが変わるため、判断に迷う場合は早めに司法書士・弁護士などの専門家に相談すると、その後の見通しが立てやすくなります。
相続人を確定する
次に、誰が相続人になるのかを確認します。相続人の範囲は法律で定められており、配偶者は常に相続人となり、そのほかに子・親・兄弟姉妹などが順位に応じて相続人になるのが一般的な枠組みです。
相続人を確定するには、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本などをたどる必要があります。これは、思いがけない相続人がいないかを確認するためでもあります。戸籍は本籍を移していると複数の役所にまたがることがあり、取り寄せに時間がかかることもあります。相続手続きは早めに戸籍の準備を始めておくと、後の段階がスムーズになります。
誰が相続人にあたるかの判断が難しいケースもあります。前の配偶者との間の子、養子、代襲相続などが関わる場合は、専門家に確認しながら進めると安心です。ご自身のケースでの相続人については、司法書士・弁護士などにご相談ください。当サイトでは個別の判断は行いません。
相続財産を把握する
相続人がわかったら、次は遺産にどのようなものがあるかを把握します。ここで大切なのは、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入・ローン・保証債務といったマイナスの財産も含めて確認することです。
- プラスの財産:預貯金、不動産、有価証券、自動車、生命保険(受取人により扱いが異なる)など。
- マイナスの財産:住宅ローン、借入金、未払いの税金・医療費、連帯保証など。
財産の把握は、通帳・郵便物・契約書・登記関係の書類などを手がかりに、わかる範囲から進めていきます。すべてをすぐに把握するのは難しいものですので、少しずつ洗い出していけば十分です。マイナスの財産が多い可能性がある場合は、相続放棄や限定承認という選択肢もあり、これらには期限があります。詳しくは相続放棄の基礎知識をご確認ください。
相続方法の検討には期限がある
財産の全体像がある程度見えてきたら、相続をどう引き受けるかを検討します。おもな選択肢は次のとおりです。
相続放棄や限定承認を選ぶ場合、原則として相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述するのが一般的な目安とされています。期限が比較的短いため、マイナスの財産が気になる場合は早めに専門家へ相談すると、落ち着いて判断できます。
期限のある手続きだからといって、あわてて結論を出す必要はありません。ただ、期限があるということだけは頭の片隅に置いておき、迷う場合は早めに相談先を確保しておくと安心です。
遺産分割協議を行う
遺言書がない場合や、遺言書で分け方が定められていない財産がある場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。これを遺産分割協議といいます。話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名・押印するのが一般的です。
この協議書は、その後の不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きなどで必要になることがあります。相続人が遠方にいる場合や人数が多い場合は、話し合いに時間がかかることもありますので、無理のないペースで進めていきましょう。分け方について意見が分かれ、話し合いが難しいときは、弁護士など専門家に間に入ってもらうという選択肢もあります。
名義変更・申告を行う
分け方が決まったら、いよいよ財産の名義変更や必要な申告を行います。おもなものは次のとおりです。
相続に関わる期限のある手続き
時期の目安順に並べています。ご状況により前後することがあります。
数ヶ月以内(期限あり)
生命保険の請求
期限の目安:数ヶ月以内(3年で時効)
窓口:各保険会社
葬祭費・埋葬料の申請
期限の目安:数ヶ月以内(2年以内)
窓口:市区町村役場/健康保険組合
高額療養費の払い戻し
期限の目安:数ヶ月以内(2年以内)
窓口:市区町村役場/健康保険
未支給年金の請求
期限の目安:数ヶ月以内(5年以内)
窓口:年金事務所
相続放棄の検討
期限の目安:3ヶ月以内
窓口:家庭裁判所
準確定申告
期限の目安:4ヶ月以内
窓口:税務署
※ 一般的な目安です。故人の状況により必要な手続きは異なります。 相続・税務など判断に迷う項目は、各窓口や専門家にご相談ください。
- 不動産の相続登記:不動産を相続した場合、法務局で名義を変更します。2024年から相続登記は義務化されています。詳しくは不動産の名義変更(相続登記)をご確認ください。
- 預貯金の解約・名義変更:金融機関ごとに相続手続きを行います。必要書類は金融機関によって異なります。
- 相続税の申告:遺産が一定額を超える場合などに必要になることがあります。原則として10ヶ月以内が目安とされ、税理士に依頼するのが一般的です。
これらの手続きは、故人の財産の内容によって必要なものが変わります。ご自身のケースで何が必要かは、法務局・税務署・司法書士・税理士などの窓口や専門家にご確認ください。
期限のある手続きを一覧で確認
相続に関わる主な手続きのうち、期限のあるものを表にまとめました。ご自身の状況に合わせて、必要なものを確認してください。期限の起算日や例外は個々の事情で異なります。
この表はあくまで一般的な目安です。期限の起算日や適用の条件は個々の事情によって変わります。判断に迷う項目は、家庭裁判所・税務署・法務局や、司法書士・税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。当サイトでは個別の法的・税務判断は行いません。
死後のほかの手続きとの関係
相続手続きは、死後に必要となる数多くの手続きのうちの一部です。死亡届や世帯主変更、年金・保険の手続きなどと並行して進んでいきます。全体の流れをまとめて確認したい場合は、死亡後の手続き一覧をあわせてご覧ください。世帯主が亡くなった場合の世帯主変更届や、年金受給の停止なども、この時期に確認しておきたい手続きです。
相続と、それ以外の届け出とを分けて考えると、いま優先すべきものが見えやすくなります。急ぎのものと、落ち着いてから進めてよいものを区別しながら、一つずつ片づけていきましょう。
一人で抱え込まず専門家の力も借りる
相続手続きは、戸籍の収集・財産の調査・遺産分割・名義変更・申告と、幅広い作業が続きます。すべてをご自身で完璧にこなす必要はありません。相続登記は司法書士、相続税は税理士、相続人の間で争いがある場合は弁護士と、内容に応じて頼れる専門家がいます。何を自分たちで行い、どこから専門家に任せるかを早めに切り分けておくと、全体の見通しが立てやすくなります。
費用はかかりますが、複雑な手続きを任せることで心身の負担が軽くなることも少なくありません。まずはお住まいの地域の専門家や、市区町村の無料相談窓口などで、全体の見通しを相談してみるのも一つの方法です。急がず、周囲や専門家の力も借りながら、少しずつ進めていけば大丈夫です。
まとめ
相続手続きは、「遺言書を確認する → 相続人を確定する → 財産を把握する → 相続方法を検討する → 遺産分割協議を行う → 名義変更・申告を行う」という大きな流れでとらえると、落ち着いて進められます。相続放棄(原則3ヶ月以内)や相続税の申告(原則10ヶ月以内)、相続登記(2024年義務化)など期限のあるものだけは早めに頭に入れておきましょう。判断に迷う部分は、家庭裁判所・法務局・税務署や、司法書士・税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。無理のないペースで、一つずつ進めていけば大丈夫です。
編集方針:この記事は、おわりじたく編集部が公的機関の公開情報に基づいて作成しています。相続手続きの期限・要件・窓口は一般的な目安を示すもので、故人やご家庭の状況によって異なることがあります。制度は改正される場合があるため、最新の内容は法務局・税務署・家庭裁判所などの各窓口でご確認ください。
免責事項:本記事は情報提供を目的としたもので、相続・法律・税務に関わる個別の判断は行っていません。相続放棄・遺産分割・相続登記・相続税の申告など、判断が必要な手続きについては、司法書士・弁護士・税理士や、法務局・家庭裁判所・税務署などの専門機関にご確認ください。
よくある質問
相続手続きは何から始めればいいですか?
まず遺言書の有無を確認し、次に相続人が誰かと、遺産にどのようなものがあるかを把握することから始まるのが一般的です。プラスの財産だけでなく借入などのマイナスの財産も含めて確認します。判断に迷う場合は、司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。当サイトでは個別の法的・税務判断は行いません。
相続手続きには期限がありますか?
手続きによって期限があるとされています。相続放棄は原則3ヶ月以内、準確定申告は原則4ヶ月以内、相続税の申告は原則10ヶ月以内が一般的な目安です。2024年からは相続登記も義務化されています。起算日や例外は個々の事情で変わるため、法務局・税務署・家庭裁判所・専門家にご確認ください。
相続手続きは自分でできますか?
書類の取り寄せや役所での届け出などご自身で進められる部分もありますが、相続登記は司法書士、相続税は税理士、争いがある場合は弁護士に依頼できます。すべてを一人で抱え込む必要はありません。迷う部分は専門家の力を借りながら、一つずつ進めていけば大丈夫です。